2025.6.25 今年は16日から有り難く葛苧づくりを始めている。8月末からの個展に向けて、制作の方も普段よりスピードが求められるため、葛苧づくりもコンパクトさを心掛け、行動範囲は自転車で巡れる範囲内にとどめ、自宅まわりに生きる葛たちと、改めてじっくりと向き合うことにした。原点に立ち返るような感覚である。
葛に取り組み始めたのはSNSはおろかインターネットもそこそこぐらいしか普及していなかった時代だ。だがいつの間にか活動とSNSがセットになってしまっていて、良い面もあるが良くない面もあり、一番の弊害は意識が分散してしまうような感覚になることで、私は未熟者なので、そういうことを上手くやれず、一つ一つの動作が鈍くなる。しかしなまじ文章を書くのは嫌いではないので、ついついやってしまう。それがいつも気がかりだった。だから今年は外部への発信もほとんど忘れることにして、必要最小限にすることにした。
葛を採ることは、どこか別の世界に深く深く入り込むような感覚がある。私たち人間界ではなく葛の世界?分からないが、10箇所以上に及ぶ葛の採集地の、それぞれの葛の性質や成長のスピード、それらと天候、そして自分の体力などとの兼ね合いから、採りに行く日や行く場所を決める。だいたい自分の気持ちが動かない時に無理をして動くと良い結果にはつながらない。何となく体が楽に動く時に動きたいように動くと奇跡のような素晴らしい巡り合わせで良い葛に出会える。まさに一期一会、葛たちと交信をして、許可を得て、取らせてもらっている、そんな感覚にどうしてもなるのだから、その感覚を研ぎ澄ませたいのである。
2025.6.27 雨は降らない予報、3回目の葛をムロ出ししても良いかもしれないが、何となくそういう気にならない。ムロを確認すると今一つ、明日が良いかもしれない。身体も何となく動かない。するとお昼前に急に雷が鳴って大粒の雨。意識を集中して葛採りをしていると、こういうことが良く起こる。天気と葛都合の兼ね合いの中、その隙間をすり抜け葛苧づくりをしているような感覚。自分の身の危険の回避と、ベストな葛苧づくりのための、予知能力に近いと思う。