ロートレックと記念写真を撮りました。
感慨深いものがあります。思えば記憶の限りでは初めて1人で行った展覧会は高校生の時でロートレック展だったのではないかと思うからですが、エルミタージュ美術館展だったかもしれません。いや、ミュシャだったかな…笑
ミュシャとロートレックは私にグラフィックデザイナーになるという夢を与えてくれました。ついぞそういう職には就きませんでしたが、今や自分でデザインしたものをそのまま印刷してもらえる時代なので、ほぼ叶ったことにしておこうと思う。
さて今日は他界した叔母から譲り受けた着物とコートを着て行きました。どちらも軽く30年は袖を通されていなかったものと思われます。着物は訪問着っぽいものですが、今日は何と葛布の八寸帯を合わせました(この時期に締められる適当な帯がなかったが、どうしてもこの着物を着たかった&葛布の帯が一番しっくり来た)。
この場合、着物と帯だけだと、常識的には少しチグハグ感が出るかもしれませんが、帽子や靴、カバンなどでドレスダウンというか、ますますチグハグにしてよく分からない組み合わせにすると、意外と何ともないというか、私の目からは素敵に見えました。
何といっても、訪問着の質感にも、葛布の光沢は大変良く馴染むのです。葛布は夏帯という常識ももはや関係ありません。ややポジショントーク的かもしれませんが、こんな極寒の雪の中でも全く違和感はありません。九寸帯ならば、より違和感がないかもしれませんが、私としては八寸帯の方が、より使い勝手が良いように思いました。
詳しくはブログできちんと説明したいと思いますが、葛布の底力を感じ、じんわりと感動しました。
「眠っている訪問着を葛布帯でドレスコードを有耶無耶にして着る」という事をご提案したいと思います。賛否両論あるでしょうし、着ていけるのはプライベートな場、もしくはものすごく寛大な場に限られるかもしれません。しかし、葛布には、歴史的経緯からも、全てを包み込む懐の深さがあります。いえ、そもそも着物そのものが、本来はそういう包容力のある衣服なのかもしれません。さらに、葛布は日常着と晴れ着を行き来できる布だと私は考えています。
訪問着を着た時の気分の高揚感は他の何にも代え難いものがありますし、葛布の帯の存在が、そのようにして、眠った着物の生きる道に貢献できることになるのならば、とても嬉しいです。
葛布の帯をお持ちの方、お手元に全然着ていない訪問着や付け下げなどの柔らかいお着物があったら、是非合わせてみてください。「ボカシ系」の帯だと、より馴染みが良いと思います。
話は戻りますが、ロートレック展も、大変面白かったです。
以下はこの時、コメント欄にいただいたコメントに返信した自分の文章です。これも後に全体と合わせて書き直します。
見た目的、感覚的に私は冬でも全く違和感がないと、今回のことでますます思いました。
・そもそも「自然布」は元は民衆のオールシーズンの日常着であり、素材の選別や文様の入れ方によっては晴れ着にもなる。
・葛布はその中でも光沢を生かした織物として公の場にも用いられる
・着物の「帯」は現代ではかなり「装飾系」に寄っている
・私の織っている葛布の帯は夏帯のような透け感はない
以上の理由からも、個人の好みにおいて、(今のところは)格式のあるフォーマルな場以外ならば冬でも良いのではと私は考えます。
普段にお使いになっていらっしゃる方々からは、「年中使ってます!」というご感想を頂いています。夏のものとして季節感を楽しんだり、年中使ったり、人それぞれ色々な楽しみ方をしていただけたら嬉しいです。
夏は涼しいのに冬は暖かいんですよ。絹と葛の相乗効果なのではないかと思います。
写真を追加します(2025.1.6)
まずはこの時に着た着物の柄、とても美しい里山の風景画です。
葉を落とした木々で全体的に少し寂しげで季節としては秋かなと思っていましたが、今回、良くみるとどうも春紅葉のようです。春の芽出し、息吹き。
こうした染めの風景画は、呉服店さんで見ていただくと「懐かしいね」とのことで、少し前に流行ったようなもののようです。でも私にはそうした感覚は分からなく、新鮮で、さすが着物と、うっとりと見入ります。こんな風景を纏うなんて、なんて素敵な文化でしょうか。この着物が着たいとご相談した時に選んでいただいた帯揚げを合わせてみました。小物だけでも現代のものにすると、グッと着やすくなります。
右肩の柄と葛布帯が背中で合わさる感じがとても素敵でした。
帯がクタクタに見えますが、これは私のところで織った帯の特徴でもあります。クタクタしながらもハリがある不思議な感じが、不思議と柔らかい着物の質感とも、とても良く馴染みます。「どんな着物にも馴染む」というご感想を度々頂きますが、葛布帯はさまざまなレイヤーでさまざまな特徴を併せ持っているので、合わせるものによって、その都度、その場に合う特徴が上手く引き出されるのだと思います。
褒めすぎでしょうか。