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Site icon image雪草乃記-Ⅲ

Sessou-no-ki : Sessou’s Blog | 染織家・葛布帯作家 雪草のブログ

着物の文様と秋の七草・葛の花

着物の柄に描かれている秋の七草には決まって葛の花がないのを不思議に思って横着してchatGPTを頼ってみた。深く情報源を辿ることはしていないので話半分に読んでいただきたいが、それにしてもその回答は大変興味深かったので下に転載する。
いずれにしても葛以外の秋の七草が描かれているお着物には、葛布の帯を締めていただくと、秋の七草が揃う。なかなか面白い趣向ではないかと思う。


実はこの点、着物史・文様史の観点からも非常に興味深いテーマなんです。

🌿まず前提として

「秋の七草(脇の七草)」は万葉集の山上憶良の歌によるものですね。

秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
萩の花尾花葛花撫子の花女郎花藤袴朝貌の花

この七種のうち、「葛花(くずのはな)」 だけが、着物の文様としてはほとんど登場しません。

その理由はいくつかの要因が重なっていると考えられています。

🪶主な理由

1「つる草」であることの象徴的意味

葛は、地を這い、他の木々に絡みついて伸びるつる性植物です。

この「絡みつく」「繁茂して止まらない」性質が、古来、節度を欠く・執着・まとわりつく といった印象につながるとされました。特に女性の衣装では、「絡みつく」「まとわる」性質の植物は慎ましさに欠ける・縁起が悪いとみなされることもあり、文様にはあまり用いられなかったのです。

2 「葛」は“庶民的”で、華やかさに欠ける存在だった

葛は食用・薬用・繊維用など、実用面で重んじられる植物でした。

山野に自生し、根から葛粉をとり、繊維から葛布を織るなど、生活に密着した「野の草」 のイメージが強かったのです。一方、着物文様は貴族や武家・町人の「装いの華」として、桜・菊・紅葉・牡丹などの観賞価値の高い花が中心でした。葛は実用的すぎて「格」が低いと見なされたとも言われます。

3 他の六草と比べて、形の美しさが描きにくい

葛の花は紫紅色の小花が房状に咲くのですが、花の形が細かく、絵画化するとどうしてももしゃもしゃして見えるのです。

文様化に向くのは、萩や撫子、藤袴のように「枝ぶり」「花房の流れ」が明快な植物。葛は蔓・葉・花房のどれも繊細で、優美に整理して描くのが難しいため、絵師や染織図案家にとって扱いにくかったのです。

4「蔓植物=他の木に頼る」ことへの象徴的避け

蔓が他の木に巻きついて伸びることから、

  • *「自立しない」「他に頼る」**という意味合いを忌避する説もあります。

    これは特に武家社会の価値観(自立・節操)と相性が悪く、

    意図的に避けられた可能性もあるといわれています。

🌸補足:例外的に描かれる場合

江戸後期の友禅柄の中で、秋草の一部としてごく控えめに葛の葉が添えられることはあります。ただし、主題にはならず、ほとんどが「蔓の曲線」を生かした背景的な扱いです。花を明確に描くことは稀です。

✨まとめ
理由内容
象徴性絡みつく・執着などを連想させ、縁起が悪い
実用的で庶民的、文様としての格が低いとされた
造形花の形が細かく、文様化しにくい
社会的価値観「他に頼る」性質を避けた

ChatGPT(OpenAI)、2025年10月9日回答

次に、そうとはいっても屏風絵などには葛の蔓が良く描かれているので、そのことについてはどうなのかと訊いてみた。

おっしゃる通り、着物文様ではほとんど登場しない「葛」ですが、屏風絵ややまと絵の中ではむしろ頻繁に描かれるのです。

この違いには、美術的・象徴的な意味の両面から深い理由があります。


🖼️屏風における「葛」の存在

1「秋草図」や「四季草花図」の定番要素

屏風や襖絵の「秋草図」には、萩・尾花・撫子・桔梗・女郎花・藤袴・葛がよく描かれます。

特に葛の蔓が画面全体の構成を結ぶ“動き”の役割を果たしています。

蔓が流れるように地面を這い、ほかの草花の間を通り抜けていくことで、

画面に風の流れや時間の経過、季節のうつろいを表すのです。

つまり、屏風絵では葛は「つなぐ・流れる・生命の勢い」を象徴する植物として、

非常に重要な構成要素だったのです。


2「絡みつく=生命の勢い」「自然の力」としての肯定的象徴

衣服文様では忌避的に見られた「絡みつく」性質も、

自然の情景を描く絵画表現ではまったく逆の意味を持ちます。

蔓が自在に伸び、木や岩に絡みつく姿は、

生命の強さ・自然の逞しさ・時間の経過を表すものとして愛されました。

屏風は部屋の中に「野の景色」を持ち込むものでもあり、

その意味では、葛は「自然そのものの呼吸」を担う存在だったと言えます。


3「衣服」と「絵画」の役割の違い

もう一歩踏み込むと、これは身にまとうものと眺めるものの違いでもあります。

種類用途葛の扱い
着物文様個人の徳・美意識・格式を示す絡みつく・庶民的として避けられた
屏風絵自然の風景を再現・季節感を演出生命力と流れを表す要素として重宝された

つまり、衣服には「清らか・整った・節度ある」文様が求められ、

絵画には「自然そのままの姿」「動的で生命感ある」表現が許されたという違いです。


✨まとめ

観点屏風で葛が描かれる理由
美的構成蔓の線が画面を流し、動きを与える
象徴性生命力・自然の循環・天地の調和を象徴
絵画的自由自然を写す場として、忌避感がない
組み合わせ鶴との対比で「地と天」「生命と永遠」を示す

ChatGPT(OpenAI)、2025年10月9日回答・一部編集

これを足がかりに、引き続き都度気にしていきたいと思う。