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Site icon image雪草乃記-Ⅲ

Sessou-no-ki : Sessou’s Blog | 染織家・葛布帯作家 雪草のブログ

手入れをしなかった庭に思う

今年は個展の制作に家事のほぼ全てを犠牲にして取り組んだので、庭の手入れなどするはずもない。葛のムロを行き来する以外は見ることもなく(見ないことにして)6月〜9月の間のおよそ3ヶ月間、完全に放置していた(一度くらいは草刈りをしたかもしれない)庭に、個展が終わってから恐る恐る出てみた。するとどうだろう、とても美しかった。草花は生き生きとして、緑は艶やかで、ここは天国?どこか異世界に意識が飛んだかのような気持ちになり、しばらくその場に佇んで、風の音と葉や虫たちのざわめきを聞いた。なんという世界だろう。といって、このまま何年も放置するわけにはいかないので、またそれなりに手を入れることにはなるのだけど。

このことは葛布の制作にも通じる。
葛布に取り組み始めたばかりの頃、手をかければかけるほど、無惨に見窄らしくなっていく葛の繊維や糸を見て悲しくなることがしばらく続いた。何もしないのが一番綺麗だから私は何もしない方が良いのではないかと思えたくらいだ。手をかければかけるほど、その美しさを損なうことしかできなくて、葛に申し訳ない気持ちになった。だから「手をかけながらも損なわない」ものづくりをするということは、当時から今も続く、そして永遠に続くであろう、重要な目標であり指針なのである。